不妊診療科
不妊診療科とは
不妊症とは、「妊娠を希望し、避妊をせずに一定期間(一般的には1年間)夫婦生活を続けても妊娠に至らない状態」と定義されています。
日本産科婦人科学会では、女性の年齢が高くなるにつれて妊娠率が低下することから、35歳以上の方は6か月間妊娠しない場合も不妊の可能性を考慮し、早めの受診が推奨されています。
当院の一般不妊診療外来は、次のようなお悩みをお持ちの方が、気軽に相談できる窓口です。
- 「いつか子どもが欲しいけれど、不妊についてまだよく分からない」
- 「なかなか妊娠しないので、まずは検査を受けたい」
- 「不妊治療を考えているが、パートナーと話し合えていない」
- 「初めから不妊治療専門クリニックを受診するのは気が引ける」
妊娠をお考えの方が受ける検査(不妊スクリーニング検査)
不妊の原因は約40%が女性側、約40%が男性側、約20%が両方あり、排卵障害・卵管の詰まり・精子の異常などの原因があります。
そのため、妊娠を希望する際は、男女ともに不妊スクリーニング検査を受けることが重要です。
女性の不妊スクリーニング検査
ホルモンバランスや甲状腺機能、肝機能、糖代謝などに異常がある場合は、不妊治療を始める前に内科で精査を行い、治療が必要になることがあります。当院の内科でも精査や治療が可能です。
また、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値を測定することで、卵巣年齢を確認し、治療方針の参考にします。
女性の不妊検査は、①採血検査と、②内診台等で行う画像検査に分かれます。
①採血検査による主な検査項目
検査項目 | 検査を受ける時期 | 検査の目的 |
---|---|---|
脳下垂体ホルモン検査 | 月経開始後3~5日目 | 卵巣の機能を調べるため、FSH、LH、PRL、E2 などを測定 |
黄体機能検査 | 排卵後7日目 | プロゲステロンの分泌量を測定し、子宮内膜の着床環境を評価 |
耐糖能検査(糖代謝) | いつでも可 | 血糖値やインスリン値を測定し、排卵障害・流産のリスクを確認 |
甲状腺機能検査 | いつでも可 | 甲状腺ホルモンのバランスをチェックし、無排卵や流産のリスクを確認 |
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査 | いつでも可 | 卵巣年齢を測定し、妊娠の可能性や治療方針の参考にする |
クラミジア抗体検査 | いつでも可 | 過去のクラミジア感染を確認し、不妊のリスクを評価 |
感染症検査(B型肝炎・C型肝炎・HIV・梅毒など) | いつでも可 | 妊娠中や出産時の母子感染を防ぐための検査 |
②画像検査による主な検査項目
検査項目 | 検査内容・目的 | 受ける時期 |
---|---|---|
経腟超音波検査 | 子宮や卵巣の状態を確認し、筋腫・内膜症・卵巣腫瘍の有無を調べる | いつでも可 |
子宮卵管造影検査 | 造影剤を使用して子宮の形や卵管の通過性を確認し、詰まりや異常がないかを調べる | 月経終了後~排卵前 |
子宮鏡検査 | 内視鏡を用いて子宮内を観察し、ポリープや筋腫の有無を確認 | 月経終了後~排卵前 |
クラミジア感染検査 | 子宮頚管の分泌物を採取し、クラミジア感染の有無を確認 | いつでも可 |
Point
子宮卵管造影検査のみの対応も可能です
人工授精を含む自然妊娠には、子宮と卵管が正常に機能していることが重要です。 特に、子宮卵管造影検査は不妊検査の中でも大切な検査の一つとされており、卵管の通過性や子宮の形状を詳しく確認することができます。
当院では、子宮卵管造影検査のみの受診も可能です。
- すでに他院で不妊検査を受けているが、子宮卵管造影検査を受けたい
- 家族に卵管の疾患があり、遺伝的な影響が気になる
- 幼少期の病気や疾患による影響が不安
このようなお悩みがある方も、まずはお気軽にご相談ください。
男性の不妊スクリーニング検査
不妊の原因は男性にも約40%の割合で関係しているとされており、一般不妊治療では精液検査を受けることが一般的です。精液検査では、精子の数や運動率、形態異常の有無などを調べ、泌尿器科や婦人科での追加治療が必要かどうかを判断します。
精液検査は男性不妊症の診断で最も重要な検査であり、基準値より低い場合、自然妊娠が難しくなる可能性があります。
当院の精液検査について
当院では、ナカメディカル製「レンズフック」精子運動解析装置を採用し、精子の状態を精密に評価し、結果が記載された詳細なレポートをお渡ししています。
検査方法
2~5日間程度禁欲をしていただいたのち、ご自宅で精液を採取してご持参いただきます。お貸し出しした専用の容器に採取し、採取後2時間以内に検査室に提出していただく必要があります。
精液の採取から時間が経つと、精子の運動率などを正確に検査できない可能性があります。
費用
精液検査の費用の目安は以下のとおりです。
費用(1回あたり) 税込 | |
精液検査 | 6,000円 (保険適応外) |
当院の一般不妊治療について
妊娠を希望される方にとって、不妊治療の第一歩は負担の少ない治療法から始めることが大切です。
当院では、タイミング法や人工授精(AIH)を中心とした一般不妊治療を提供し、できるだけ自然な妊娠の実現を目指します。
タイミング指導(タイミング法)
[ 治療サイクルの目安:約3~6ヶ月 ]
超音波検査で卵胞の成長を確認し、排卵日を正確に予測して、最も妊娠しやすいタイミングで夫婦生活を持つよう指導します。
治療の流れ
① 排卵日の予測(卵胞チェック)
- 超音波検査で卵胞のサイズを測定(直径約20mmで排卵)
- 予測排卵日の1~3日前に受診し、排卵日を正確に予測
② 排卵日に合わせて夫婦生活を持つ
- 医師が妊娠率の高いタイミングをアドバイス
③ 排卵確認
- 超音波検査で排卵が起こったかを確認
- 必要に応じて黄体ホルモン補充を行い、子宮内膜の厚さをチェック
人工授精(AIH)
人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて、洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入する方法です。受精から妊娠までのプロセスは自然妊娠と変わらず、精子がより確実に卵子と出会うサポートを行う治療法です。
人工授精の特徴
- 体への負担が少なく、受精から妊娠までのプロセスは自然妊娠と同じ
- タイミング指導からのステップアップで、体外受精より前に試みることが多い
- 保険適用により費用負担が軽減(1回あたり1〜2万円程度)
治療の流れ
① 精子を採取(専用容器に採取)
② 精子の洗浄・濃縮(不要成分を取り除き運動率を向上)
③ 子宮内に精子を注入(カテーテルを使用し排卵日に注入)
④ 受精・着床を待つ(この過程は自然妊娠と同じ)
人工授精で妊娠する方の約90%は4~6回目までに成功するとされており、6回を目安に体外受精へのステップアップを検討します。
人工授精が向いている場合と向いていない場合
人工授精が向いている場合
- 精子減少症・精子無力症(精子の数や運動率が低い)
- 性交障害(性交が困難な場合)
- 精子の進入障害(子宮頚管粘液の異常など)
- タイミング法を6周期以上試しても妊娠しないが、体外受精には抵抗がある場合
人工授精が向いていない場合
- 精子に問題がない場合(人工授精は精子の進入をサポートする方法のため、精子に異常がない場合は有効性が低い)
- 女性の年齢が高い場合(卵子の質が低下しやすく、早期の体外受精を検討することが望ましい)
一般不妊治療における排卵誘発薬
排卵誘発薬は、卵胞の成長を促し、排卵を正常にコントロールするための薬剤です。
タイミング法や人工授精(AIH)などの一般不妊治療で使用されることが多く、妊娠の可能性を高めるサポートをします。
排卵誘発薬の種類と特徴
排卵誘発薬には、内服薬と注射薬があり、患者さまの状態に応じて適切な薬剤を選択します。
種類 | 主な薬剤名 | 特徴 |
---|---|---|
内服薬 | クロミフェン(クロミッド®) / レトロゾール(フェマーラ®) | 比較的副作用が少なく、軽度の排卵障害の治療に適している。服用開始から約5日間で効果が出る。 |
注射薬(hMG製剤) | フォリルモン® / HMGフェリング® | 卵胞の発育を強く促し、より確実な排卵誘発が可能。多胎妊娠のリスクがあるため、慎重に使用する。 |
注射薬(hCG製剤) | ゴナトロピン® / Ovidrel® | 排卵を確実に促すために使用され、hMG製剤と併用することが多い。 |
GnRHアゴニスト・拮抗薬 | ブセレリン® / セトロタイド® | ホルモン分泌を調整し、排卵のコントロールが必要な場合に使用。 |
排卵誘発薬を使用する目的
- 排卵障害(無排卵症・PCOSなど)の改善
- 複数の卵胞を成長させ、妊娠の確率を高める
- 排卵のタイミングを正確に調整し、タイミング法や人工授精(AIH)の成功率を向上させる
使用時の注意点
・排卵誘発薬は医師の指導のもとで使用する必要があります。
・副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠のリスクがあるため、慎重な管理が必要です。
・適切なタイミングで排卵を確認しながら治療を進めることが重要です。
当院では、患者さま一人ひとりの状態に合わせた適切な排卵誘発法を選択し、安全かつ効果的な不妊治療を提供いたします
一般不妊診療の費用
一般不妊診療にかかる費用は以下の通りです。
治療・検査項目 | 保険適用 | 費用の目安(1回あたり) |
---|---|---|
タイミング法 | 適用 | 数千円~1万円程度 |
人工授精(AIH) | 適用 | 1万~2万円程度 |
排卵誘発法 | 適用 | 数千円~5千円程度 |
不妊治療助成制度について
東京都では、不妊検査や一般不妊治療(タイミング法・人工授精など)にかかる費用の一部を助成する制度があります。
「不妊検査等助成事業」
詳細は東京都の公式サイトをご確認ください。
東京都 福祉保健局 不妊検査等助成事業
Point
当院では、一人ひとりの状況に合わせた治療プランを提案し、できるだけ負担の少ない形で妊娠のサポートを行います。
「自然に近い形で妊娠を目指したい」「まずは負担の少ない治療から始めたい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。